ぷよねこ日々御留書 since2023

「にちにちおとどめがき」 毎日更新 日々の記録です。

2023年6月22日(木) 怪 物 〜 上諏訪の湯上がりの風のやうな〜

*御留書が一週間遅れになってます。これは先週の木曜日のできごとです。

 

 

戦国時代の小説を読んだり、城郭の紀行番組を観たりしてて思った。

人が老いるということは、城や砦が落ちてゆくのと似ているな、と。

弱点はある程度わかっていて…たとえば僕の場合は血管、動脈硬化などですが、

そこを点検したり、補強(難しいけど)したりする。

他にも弱点、敵がつけいる隙が続々と出来てくる。

過去の古傷とか、消化機能の低下とか、ポリープとか、目とか、耳とか、ときに内部崩壊(自己免疫疾患)も。

炎上したり、土台が崩れ落ちる砦が目に浮かぶ。

原田芳雄(享年70)が晩年に話してたことを思い出す。

「最近、ちょっとの段差で転ぶんだよ。すこし足をあげれば渡れると思うところが、
 足があがってないんだな。年を取るのはなかなかたのしいよ」

そうそう、転んだり、手元からモノがこぼれ落ちたりってのも砦が脆くなる現象かな。

 

昨日に続いて今日も劇場で映画を観る。

MOVIX尼崎で13時50分の上映だとiPadにメモしてあった。

チケットを買って入ろうとするとスタッフの男子から。

「これまだ時間があるので開場は10分前からですね」と言われる。

14時45分の上映だった。

チケットにもそう印刷されている。

それを僕は買ったはず…。

砦が落ちるのも遠くない。

見通しが悪いぞ。

 

1時間空いてしまった。

チケット買ってしまっているし、待つしかない。

夏用の登山パンツがワークマンの広告に出ていたことを思い出す。

検索すると1.6㎞のところに名神店がある。

歩いて往復するにちょうどいい。

雨が降ったり止んだりだが、歩くか。

運動出来てないのでせめて歩こう。

 

尼崎のショッピングモールにことしもヤマボウシが咲く。

殺風景な名神高速あたりを歩く。

 

「怪物」@MOVIXあまがさき

大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。
 「怪物」とは何か、登場人物それぞれの視線を通した「怪物」探しの果てに訪れる結末を、是枝裕和×坂元裕二×坂本龍一という日本を代表するクリエイターのコラボレーションで描く。中心となる2人の少年を演じる黒川想矢と柊木陽太のほか、安藤サクラ永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希角田晃広中村獅童、田中裕子ら豪華実力派キャストがそろった。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され脚本賞を受賞。また、LGBTクィアを扱った映画を対象に贈られるクィア・パルム賞も受賞している。

2023年製作/125分/G/日本 配給:東宝、ギャガ

 

 

是枝作品、坂元裕二の脚本、音楽に坂本龍一がからんでいて話題作。

人と人のちょっとした違和感でノイズが生まれ、それが思わぬ方向に増幅してゆく。
誰も怪物じゃないのに…。

それでも見終わった直後の感想は……美しい映像のエンディング、風呂上がりに初夏の風を浴びたようだった。

舞台は諏訪らしき湖の畔の町。(ロケは諏訪だろう)

上諏訪の温泉に行きたいなと思った。

映画の中にも出てきたが、路地裏に小さな町温泉があって、どこも泉質やその風情がいいんだ。

 

2015/6/6 信州上諏訪路地裏温泉の愉楽 - ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

 

見終わっていろんな人のレビューを読み、シネマ友だちのH田とラインでしばし感想を交換した。

 

kdc.hatenablog.com

エンディングの感じは好きだけど、諏訪も良かったけど、最高傑作ではないかなと。

脚本と演出がバッティングしちゃってて無理があるような。

いや、失敗ではないんですけど。

個人的には演出と脚本が狙いすぎてるというか両方とも立ちすぎてて、渋滞してるようには感じましたね。

狙いすぎた演出と台詞が続くと何かこう逆に見入っていけないというか…。

このパターンの視点変えたら、あらあら?え? というのは古典であり、久々に観た「桐島」では新鮮だったけどね。
狙いは謎解きじゃないとわかってながらも、じゃあ、なんでこの手法?ってのも残るね。

 古くは「羅生門」、「桐島」で再発見された感じですよね。

確かに新鮮味はなかったです。

その構成にしたのは、プロデューサーからの提案だったみたいで、

坂元さんのドラマの物語の密度を映画に持ち込むための手段として、

この構成を坂元裕二に提案したみたいです。

確かに凄い座組をコントロール出来なかったのかもね。

 

脚本の坂元裕二のインタビューが引用されていた。

ストンと腑に落ちた。

これだよ、これ。

「クルマを運転中、赤信号で待っていました。前にトラックが停まっていて、青になったんですが、そのトラックがなかなか動き出さない。よそ見をしてるのかなと思ってクラクションを鳴らしたけど、それでもトラックが動かなかった。ようやく動き出した後に、横断歩道に車椅子の方がいて、トラックはその車椅子の方が渡り切るのを待ってたんですが、トラックの後ろにいた私には見えなかった。それ以来、自分がクラクションを鳴らしてしまったことを後悔し続けていて、世の中には普段生活していて、見えないことがある。私自身、自分が被害者だと思うことにはとても敏感ですが、自分が加害者だと気づくことはとても難しい。それをどうすれば加害者が被害者に対して、していることを気づくことができるだろうか。そのことを常に10年あまり考え続けてきて、その1つの描き方として、3つの視点で描くこの方法を選びました」

カンヌ国際映画祭から帰国しての凱旋記者会見で坂元裕二さんはこうコメントしている。(日テレNEWSより)