諏訪の 民宿すわ湖 で目覚める。
朝湯が最高に気持ちいい。
朝食付8畳和室5700円、夕、夜、朝と3回温泉につかる。
9時チェックアウト。
酒蔵めぐりの待ち合わせ時間まではまだ1時間ある。
荷物を預けて諏訪湖の湖岸へ散歩。
湖上を吹き抜ける風が冷たい。
10年ほど前にこの湖岸公園で市民ランナーを撮影した。
きょうは平日、ジョガーは一人もいなかった。
諏訪湖岸で四股を踏んでみた。
10時から諏訪五蔵めぐりの後半戦スタート。
3つの蔵、麗人、横笛、真澄の順番で時間をかけてゆっくり試飲しながら巡る。
酒の味はもちろん、それ以上に蔵の歴史を知り、たたずまいを味わい、蔵のスタッフとの会話が愉しい。
試飲するスペースも蔵それぞれ。
麗人はどこか化学実験の場みたいでいただけない。
横笛はちょっと暗めの道路に面した角打ちっぽいカウンター、ここはいいな。
真澄は中庭に面したラウンジスペースのようで清潔でモダン。
団体客も受け入れられる広さもある。
真澄の女性スタッフが言う。
「試飲にはいろんな方がいらして、コインのかわりに100円玉入れたり、受けるカップを置かずにボタンを押す人もいます」
この五蔵めぐりは10年ほど前からやっているらしい。
「以前は試飲グラスでこの線まで入れて提供してたんです。」
それだと30mlほどになる。
一つの蔵で5種類、150ml、ほぼ一合ほどになる。
これを5蔵なら五合か…。
酔って立てなくなる人もいるだろうな。(笑)
今は一種類15mlから真澄だけ20mlです。
真澄は大きな蔵でショップにも十分な人数のスタッフがいるが、本金や横笛のような小さな蔵は大変だろうな。
時間の無い人は、真澄プラス1くらいでも楽しめると思う。
まもなく新酒の季節、真澄で杉玉づくりをしていた。
なるほど、杉玉の球形は竹で編んだものだったのか。
これに杉の葉をデコレーションするのだ。
真澄を出たのがお昼過ぎ。
髙島城(湖上の浮城)まで歩く。
維新後に廃城となり、昭和45年(1970年)に再建された天守がある。
木製でなかなか趣のある再建天守だった。
本丸跡は紅葉が美しい。
太田和彦氏のトレース旅、今回のもうひとつの目的地は片倉館。
当地で絹産業を興した片倉財閥が作った温泉保養施設が今も公開、利用されている。
シルクエンペラーが遺した近代の産業遺産のひとつ。
本館を見学し、お目当ての千人風呂〔750円)へ入る。
日本最大の銭湯(天然温泉)だ。
ここでテルマエロマエのロケが行われたという。
スイミングプールのような広さで、深さは1m10とたっぷりの湯量であったまる。
千人風呂の2階でビールを飲む。
レトロなホールで休憩室と食堂になっている。
A部氏はざるそば、僕はライス少なめのカレーにした。
朝9時から昼3時まで歩いて諏訪観光。
ちょうどいい時間と運動量、風呂に入ってビールを飲んで大満足の半日だった。
A部氏は塩尻泊、あすは一人でワイナリーを巡る。
僕は飯田線で飯田へ行く。
あすは城下町飯田を歩くつもり。
奈良井宿、諏訪の酒蔵、片倉館千人風呂、安西水丸氏の城旅紀行「ちいさな城下町」にある飯田を歩き、愛知の実家へ。
これで今回の旅は満願成就だ。
84.4キロを3時間近くかけて行く。
関西なら西宮から和歌山ほどの距離、紀州路快速をつかって1時間半。
飯田線だと倍かかる。
飯田線は高校生の帰宅列車だった。
ある駅から数人乗り込み、ある駅で下りる。
またその駅から数人が乗り、ほどなく下車する。
飯田線がなかったら彼ら彼女らはどうなるのだろう?
電車は暗い鉄路をゆっくり進む。
少し遅れて7時半ころに飯田に着く。
飯田の夜は食堂でおでん飲む、と目論んでいた。
飯田は焼肉の町らしい。
一人焼肉も悪くはないが胃腸のことを考慮しておでんにした。
飯田のおでんはねぎ醤油ダレで食べるらしい。
あらかじめ調べておいた店「すゞめ食堂」だ。
食堂の部屋と居酒屋の部屋が分かれているらしい。
食堂には誰もいなかったので、赤ちょうちんの灯った方の戸を開ける。
小さなカウンターに6席くらいのこぢんまりしたスペース。
なかなか趣がある。
白髪頭の地元の爺さまがひとり飲んでいた。
カウンターの女性に「あんた、今年でフィーバーか!」と言ってたので、彼女は五十五なのだと察した。
「あんたがこーんな子供の頃から知っとるでもんで」
と小学生くらいの背を示す。
熱燗をもらう。
肉厚のグラスに注がれて出てくる。
おでんは、厚揚げ、糸こん、里芋。
小皿に葱だれがついてくる。
「この前、ケンミンショーが取材に来たんですよ」
姫路のしょうがダレのおでんに似ている。
彼女の言葉に東三河の方言を感じ取る。
ししゃもの牡があった。
さっきの爺さまに倣って、熱燗をもう半分、と注文する。
迷ったが〆はなし。
15分ほど歩いて知久町にあるホテルにチェックインする。
イイダステイというおそらくリニューアルしたホテルで、全てが無人だった。
部屋はオールツイン。
ベッドのクッションがちょっと柔らかすぎるような…。
風呂に入ってほどなく寝入る。